スノードロップ
「…何でっ、」
「知ってるのかって?僕の祖父が顔が広くてね、涼さんも司郎さまも知り合いだったんだよ。僕もそれは昔聞いたんだけどね」
祖父……
花柳様って何者なの?
さっき私に場所を変えようかと言った時、
メイド長の佐々部さんに伝えたら。
佐々部さんはあっさり外出許可を出してくれた
。
花柳様からの要望でと伝えたら。
「……」
「ごめんね。一ノ瀬さん。」
「何が…ですか」
この人に謝られる事の心当たりが多すぎて、
私はちょっと冷たい口調で言ってしまった。
「…色々。君には痛いとこばかりつかれるなぁて思ってさ、こないだ家に来たときもそうだったから」
花柳様の家に行った時?
「覚えてない?メイドの姿が見えない、静かな家だって言ってたの。」
「……ハンカチを渡しに行った時の事ですか、」
そうと花柳様は頷いた。
前の席にいるから表情が見えない。
ただ前を見ている。
そういえば、言った気がする……。