スノードロップ
ような
「本当はもっと賑やかな家だったんだけどね……母がいた頃は」
「母がいた頃は………でも花柳様のお母様は花道の先生でご健在では……?」
ブゥンと車がスピードを出す。
前の車を追い抜き前に出た、
花柳さまはふっとミラー越しに私を見た。
「今の母は僕が10才の時に来た後妻だよ。本当の息子じゃない」
後妻……
本当のお母様ではない。
「本当の母は使用人に混じって料理やら何かしてる人でね、いつも笑っていた。それまでの、花柳家は静かな家で使用人が身内と馴れ合うなんてあり得なかったらしい。逆に母にはそれが理解出来なかったみたいだ。母から使用人に働きかけていって段々と家は明るくなった。雰囲気が柔かくなっていった」
「そうだったん…ですか」
「けれど、今の母はお嬢様でね、なかなか使用人と馴れ合うつもりはないらしい。ある程度の親しみやすさは見せるけど、一定のラインは越えない。母が生きてた頃は父親も母の意見を尊重していたんだけどね。今の母がああだから、使用人は姿なく働いてる感じなんだ。僕は母が生きてた頃を知ってるから昔をたまに思い出しては懐かしく思うよ」
懐かしく思う…
使用人は姿なく働くもの。
花柳様にも色々あったのかな。
「君が似てるからかも知れないな、」
「私…が?」
「うん…母に似ている。」
花柳様は素直に言った。
飾りもなくたただ、事実をありのままに。
小さな子どもみたいな気がした。
司さんが見せる少し寂しそうな感じに似ていた。