スノードロップ
「着いたよ」
しこたま車を走らせて、たどり着いたのは恐らく
神楽坂辺り。
車を降りたら、辺りは料亭や旅館のある通りで
ギリギリ車が入れる幅の狭さだった。
「花柳さま、あの」
「千明でいいのに。様付けなんて面倒じゃない?」
すたすた慣れた感じで石畳を歩いていく。
着物に足元は下駄。
違和感なく彼はこの風景に溶け込んでいる。
「司の母はね、それは綺麗な人だったらしいよ。
芸名の涼は本名の涼華(すずか)から命名されたらしい 。」
ここだよと花柳様は、大きな木造の門の中に入って行った。
砂利が敷いてあり、踏み石がのっている入口だけでも
まるで高級料亭の入口だ。