FLOWER



太陽が昇ってるうちに外に出るなんて数週間ぶり。
自分が思ってよりもはるかに
夏は近づいているようだった。



コンクリートから発っせられる熱気に、早くも吐き気を催しそうになる。



「はやく…避難しなきゃ…」



実際に歩いたのは数百メートル程度だけど
体力がない私には、1歩1歩が本当に重かった。




駅に近づいてきた所で
タクシーに乗り込み、やっと一息つく事ができた。




「お嬢さん、どこに行きます?」


ようやく一息ついたのに
もうちょい落ち着かせてよ…
そんな事を心で呟きながらも


「天神までお願いします」



と、いつもの営業スマイルで返事をしていた。




愛想よく接して損する事なんてほとんどない。
自分も気持ち良く、相手も気持ち良く過ごせればそれに越した事はないだろう。





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