明日僕が愛する人。
第1章・ユリ
ジリリリリリ──────
朝靄に響いた、アラームの音。
3ヶ月間聞き慣れたこの音は、もう俺の二度寝根性にはまるで刃が立たなくなってきている。
大学もバイトもそれなりにして、それなりに遊びもしてた大学1年の6月の朝。
寝起きの頭で聞こえてくるのは、焦りの見えない車の音だけ。
世間は案外、静かなものである。
そんな事を考えながら、のそりとペチャンコの布団から上体を起こす。
眩しさにまばたきしながら、今日も1日が始まったと、オレは肩を落として立ち上がった。