いつか、きっと。
私が乗ったのを確認すると同時に、サクがペダルを漕ぎ始める。
爽やかな向かい風に乗って、サクがいつもつけている香水の匂いが鼻孔をくすぐった。
「――皐月」
次々に流れていく風景に目を向けていた私は、サクの声に視線を戻す。
「何?」
「お前…また痩せたな」
ハッと息を詰めた。
何も答えようとしない私に、サクが話を続ける。
「まともに食ってないんだろ。顔色も悪いし…心配かけさせるんじゃねぇよ、馬鹿」
相変わらずサクは前を向いたまま言葉を紡いだ。
サクの服を握る手に、力が入る。
「……兄貴も皐月がそんなんだったら心配する」
ボソッとつぶやいた最後のサクの言葉に、キュッと心臓が冷たくなった。