いつか、きっと。
それを隠すように、乾いた笑いをもらす私。
そんな私にサクは横目で振り返った。
黒い瞳を見つめる。
「………ちゃんと掴まってろ」
何か言いかけた言葉を飲み込み、ぶっきらぼうにサクが言い放つ。
その大きな背中に額を当て、瞳を閉じた。
静かな暗闇に浮かんでくる笑顔。
「―――ごめんね…」
小さくつぶやいた。
誰に対してでもなく、自然に零れでたその謝罪の言葉は、吹き抜ける風に飛ばされていった。
「着いたぞ」
サクの声に、ゆっくりと目を開けた。
もう、あの笑顔は見えない。
静かに頭を振って、サクの体から離れた。
「サク…ありがとう」
自転車から降り立ち、サクを見上げる。