いつか、きっと。




「大丈夫だから、サク。早く行こう?」



「でも皐月、………」





笑ってみせた。



“大丈夫、私は平気だから”



それを伝えるために。




そんな私に対して、サクの表情は厳しかった。


何か言いたげな視線を送ってくる。





「ほら、遅れちゃうよ。早く行こう」





その視線に気付かないフリをして、ぐいぐいとサクの腕を引っ張った。




―――聞きたくなかった。



何を言われるかなんて、手にとるように分かる。


でも、そんなことを聞きたくなんてなかった。





「行こうよ、サク……お願いだから…」





お願い、サク……



何も言わないで…
< 16 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop