いつか、きっと。
崩れる笑顔に、サクは何か感じ取ってくれたんだろうか。
私の瞳をじっと見つめた後、小さくため息をついた。
「――分かったよ…」
私の手を自分の腕から外しながら、サクがつぶやく。
思いのほかに手に力が入っていたみたい。
サクの腕に、うっすらと私の手の跡が残っていた。
「皐月」
その腕を隠すようにして、サクは私にかばんを渡す。
ずっしりと重いそれは、今のサクの気持ちのようだった。
「何を言われても、お前らしくいろ。何も話さなくてもいいから。皐月がしたいようにすればいい」
サクが私のすぐ隣を通り過ぎる。
「けどな。心配ってのは大切だからするんだよ。…それを鬱陶しがるのはお門違いだ」
よく覚えとけ。
最後にそう言い残し、サクは歩いていった。
ふわりと香水の匂いを置いて。