いつか、きっと。
失いしモノ
―――心配ってのは大切だからするんだよ。
さっきのサクの言葉が頭から離れない。
ぐるぐると回り続け、存在感を増していく。
ふいに胸元へ手をやった。
「……ん」
いつもあるはずのものがない。
あぁ、そうか。
家に置いてきたんだった。
机の上にある赤いリボンを思い出す。
つい癖で手が伸びちゃった。
行き場のなくなった手を、静かに戻した。
―――キーンコーンカーンコーン
大きく鳴り響いたチャイムの音に、ゆっくりと歩き出す。
どうしたんだろう。
来る時と違って、足どりがずいぶんと重くなった気がする。
ちらほらと駆けてくる生徒に抜かされながら、靴箱にたどり着く。