いつか、きっと。
「ほら。早く出な」
私の体を素早く持ち上げ、楓は膝についた砂を払った。
それをぼうっと眺めている私の耳に、皐月?とお母さんの声が聞こえてきた。
「あ…もしもし」
『皐月?体は大丈夫?熱は?』
柔らかく穏やかなお母さんの声。
すぐに思い直し、鏡夜に目配せをしてその場を離れる。
「ん、大丈夫だよ」
『ほんと?辛くなったら楓に言いなさい。楓にはすぐに帰ってくるように言ってあるから』
「うん、分かってる」
足で砂を蹴り、隣にいる鏡夜に笑いかける。
『それと…皐月』
「ん?」
鏡夜に伸ばしかけた手を引っ込め、携帯を横目で見つめる。
お母さんがいる訳じゃないのに。
そんな自分がおかしくて笑う私に、鏡夜も笑う。