いつか、きっと。
「私、行ってくるね」
にっこりと笑いかければ、やっと鏡夜はいつものように笑ってくれた。
『ん。気をつけてね。二人の言うこと、ちゃんと聞くんだよ』
「うん。じゃあ行ってきます!」
勢いよく駆け出す私を照らすのは、さんさんと降り注ぐ太陽。
ちりちりと足の裏を焦がす砂を蹴りながら走った。
私は振り返らなかった。
今振り返ってしまったら、きっと泣いちゃう。
そんな気がしたの、だから。
「っ楓ー!サクー!」
代わりに、私を待ってくれていた二人だけを見つめて。
「…水着はダメって言ったよな?」
「まぁ、俺たちが見張ってればいいことだろ?」
笑顔で腕を広げる楓に向かって走る。
抱きしめられる寸前、鏡夜の顔が浮かんだ。
そっと優しく微笑んでる鏡夜が。
「「皐月」」
ふわりと楓の腕が私を捕まえた時、聞こえてきたのは楓とサクの声。
鏡夜じゃない。
なのになぜだかすごく安心した私は、ゆっくりと目を閉じた。
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