いつか、きっと。
でも、楓…
どうしても行かなくちゃならなかったんだ。
どれだけ辛かろうと、苦しかろうと、行かなきゃいけなかったの。
「何で来たんだ。こうなることは分かってたんだろ?」
「………………………」
「何か理由でもあったのか?」
理由―…
私にとっては、とても大切で、愛おしい理由。
それは、誰にも奪えはしない、私たちの理由。
きつく唇を結び、黙りこくっている私に、楓が短く息をもらした。
まるで何かに気づいたように。
「そう……か」
スッと楓の手が離れ、髪が私の頬にかかる。
「今日は…」
楓の声を遮るように、チャイムが鳴り響いた。
ゆっくりと顔を上げて、小さく笑う。