いつか、きっと。
息が上がり、胸の辺りがギュウッと締め付けられる。
荒い息を吐く自分の声を聞きながら、額に滲む汗を拭った。
―――――もうすぐ。
「………っ、鏡夜」
長くそびえる階段を見上げ、愛しい名をつぶやく。
ドクドクと激しい動きを繰り返す心臓が、一瞬だけ、とくん…と高鳴った。
何となく、分かってたんだ。
鏡夜のいるところ。
きっと鏡夜は、私たちの思い出の場所にいるって。
勘なんかじゃなくて、確かにそう思ったの。
だから、何の迷いもなくここに来れたんだ。
前だけを見据え、一段一段踏み締めるように上っていく。
サワサワと風が木々を揺らし、その風がもうすぐ秋の訪れを告げる。