いつか、きっと。
「大丈夫だから……」
「皐月……」
「ごめん、楓…何だか疲れたから帰る…サクには先に帰ったって言っておいて」
一切目を合わせずに楓に背を向けて、出口へと歩きだす。
まるで土砂降りの雨に降られた後みたいに、体の芯まで冷たい。
―――鏡夜。
私、やっぱり雨は嫌い。
服は濡れるし、髪だってうねるから。
それに…
隣に鏡夜がいないんだもん…
だから、嫌い。
よろよろとふらつきながらもドアに手をかけた。
「―――皐月っ!」
後ろで楓が叫んだ。
「リボン…、今度からは付けろよ」
何を言われるのかと思ったら……
小さく息をつき、振り返ることなく屋上のドアをすり抜ける。
扉の閉まる音が、やけに大きく感じた。