いつか、きっと。
テーブルの上に置かれた赤いリボンに視線を落とす。
まだ使って1年くらいしか経ってないから、形もキレイだし、色だってキレイなまま。
だけど、今の私にはどうしても色褪せて見えてしまう。
―――“似合ってるよ、すごく”
あの人の声が蘇る。
…やめとこう。
逃げるようにリボンから視線を逸らし、手元にあるケータイをポケットに入れ、スリッパに足を滑り込ませる。
さっきから私を呼び続けているお母さんに、ため息をつく。
ちゃんと聞こえてるってば……
「……今行く」
鉛のように重い足をひきずりながら、乱暴にドアを開けた。
「……皐月、起きたの?」
階段を下りてくる私に、お母さんが驚いた顔を見せる。
お母さんが呼んだんじゃん……