いつか、きっと。
「…おはよう、楓(カエデ)」
“あの日”以来、人との接触を避け続けていた私。
それは友達に限らず、家族とも。
だから、兄である楓の声なんて久しく聞いてなかった。
きっとお母さんが配慮してくれたんだと思う。
私が“あの日”のことを思い出して、悲しまないように。
「お前、もう…「楓、皐月!早くしないと学校に遅れるわよ!」
無理やりに楓の声と重ねるお母さんを見て、確信する。
バレバレだよ、お母さん。
ぐいぐいと楓の背中を押して、私から遠ざけてる。
「母さん!ちょ…!」
「新聞取ってくるのは楓の仕事でしょ。早く行きなさい」
「は!?」
……すごいこじつけ方。