いつか、きっと。
忘れモノ
―――――――――……
とんっ―――。
五十段近く続いた石段の最後の階段を強く踏み締めた時には、私の額にうっすらと汗が滲んでいた。
ぐい…と手の甲でそれを拭う。
小さく息を吐きだし、目の前のひらけた視界に、薄く目を細めた。
『――――……久しぶりだね、ここに来るの』
「うん…」
そんな会話をする私たちの目の前には、見上げるほどの大きな木。
緑色の葉が覆い繁り、風が吹く度にさわさわと音を鳴らしている。
私の家の近くにある高台に植えられたこの木は、小さい頃の私と楓の遊び場だった。
楓やサクと出会ってからは、私たち4人が集まる憩いの場になったんだ。
トランプをしたり、勉強したり。
ただ、流れる雲を寝転んで眺めたりして。
みんなといるだけで楽しくて。
どんな時でも笑顔が絶えなかった。