いつか、きっと。




何度も深呼吸をする。



心を落ち着かせるだけじゃない。



切り替えがほしかったから。



泣いちゃ、いけない。



絶対に涙は見せちゃいけないから。




言葉を作り上げ、私が声を発するまでの間、鏡夜は黙って私を抱きしめていた。



それがすごく懐かしくて。



ゆっくりと目を閉じ、口を開く。





「……さっきのこと」





大丈夫。



私は泣かない。





「見てた…って?」





大丈夫。



私は鏡夜を信じてる。



不安なんて、きっとすぐに消えるから。





「鏡夜は私の傍にいたの?」





少し間を置いて、鏡夜はうん、とだけ答えた。
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