同居の秘密。【完】


口に入れた瞬間、翔さんは初めて私に笑顔を見せた。


その笑顔に私は赤面し、息を飲む。


「美味い!」

微笑みながら私の作った料理を食べてくれている翔さん。


それだけで私は嬉しくて堪らなかった。

こんなに喜んでくれるなんて。

作って良かった。

私もつられてニコニコしてると、いつの間にか翔さんはペロリとご飯をたいらげていた。


そして魔法が解けたように、昨日の翔さんに戻った。


「…本当に旨かった。人の手料理を食べたのは数年振りだったから」


「お母さんは…」


「俺が中学生の時に死んだ」


え………?

自分が聞いたのに罪悪感でいっぱいになってしまった。


「…ごめんなさい…」


 
< 86 / 544 >

この作品をシェア

pagetop