【短編】『おもいで文集』
『なに?その本』

見たことが無い本だった。
でも明らかに手作りの冊子だとはわかる。


『これ卒業文集だよ、未南子の』


―私の?

『クラスみんなが書いた作文と、プロフィールと文集の持ち主になる人の評価が書いてあるんだ』


あ…私貰ってない。
確か制作段階には入っていたはずだよね。

『はい。多田未南子専用の文集っ』

―おもいで文集―
と題された本を開くと、懐かしい名前がたくさん書いてあった。

そして私の作文をみつけた。


――最近――
最近妙に学校が楽しい。なぜだかわからないけど。このクラスで良かったなと思う。
休み時間はいつもトランプをして、給食もなかなか食べ終わらないくらい喋って、休日も遊ぶ。

だからお母さんに「最近、よく笑うね」と言われた。私が笑ったことが無い人みたいに。でも笑ったことくらい何度もあるよ。
短いけどたくさん語ると原稿用紙がオーバーしちゃうので内に秘めとくことにする。

多田未南子。




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