【短編】『おもいで文集』
海に着くと、未南子は靴を脱ぎ裸足になって砂浜に走った。

少し肌寒く感じる。

でも砂は少し暖かく感じた。


走り飽きると砂浜の上に座った。
蓮も隣に座る。

懐かしい中学の話でまた盛り上がった。
そして話が尽きると、蓮は聞いた。

『今日、なんであのカフェで一人だったの??』

――言っても良いのかな。
また人を失ったと。
未南子は悩んだが、言うことにした。

『今朝ね、彼氏の浮気を見つけたの。私なりに愛してたんだけど…ダメだったみたい。結構ショックで。仕事休んじゃった。』

蓮はまじめな顔して未南子をみた。
『ね、未南子のことを今更だけど守りたい。あの日からずっと思ってたんだ』

沈黙が続いた。
未南子は涙を流している。

『本当にそうしてくれる?』

『うん。絶対。何があっても』

ふと、蘇る。
白い布を被せられた親の前で私が取り乱してるときに、蓮が抱きしめてくれたこと。

なにも言わずにギュと。

確か私は泣き止んだ気がする。
でも一人で家に居たその夜はずっと泣いていた。唯一泣き止んだ時間が抱きしめられた時間。

寂しい、寂しいよ…
あの時、ずっと思っていた。

でもいつの間にか…おばあちゃんと暮らしてく内にそれが消えて、おばあちゃんと別れたときはあの時より悲しまなくて、自立していく度に強くなったのではなくて強がっていったんだ。


『寂しい、寂しいよ』

蓮にもたれ掛かりながらつぶやいた。

『おねがい…側にいてくれる?』

『大丈夫。離れないから』

< 24 / 30 >

この作品をシェア

pagetop