【短編】『おもいで文集』

―傷心中。

『朝から熱が高くてヒドく具合いが悪いので病院に行きます。なので有給休暇を使わせてください。』

…熱は無いけれどヒドく具合いが悪いのは一理ある。
適当に理由を言ってみようと思った。
大抵いつも電話を受けるのは同僚だし。

会社に電話をすると、運悪く苦手な課長がでた。

いつもは同僚が出るのにこういう時に限って不運は続く。
課長が電話を出た日に休みはなかなか取れない。

だがなぜか今日は課長の機嫌が良く、すんなり休みを取れた。



受話器を置き、風呂の準備をした。

泣きじゃくった顔、くしゃくしゃな髪をどうにかしたい。
あと彼のことをすっきり流したい。
そう思ったから。


風呂を沸かしてる間に彼の使った食器類や着替えと彼と撮した写真。全部リビングに持ってきた。
そして全部段ボールに突っ込んだ。

部屋から、彼の存在があったことを消し去りたい。

写真以外のものを全部リサイクルショップに売ろうと考えた。
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