空の奏
放課後、部長に呼ばれ一足早く音楽室へ向かう
用件は文化祭について。
今は七月の中旬だけど、コンクールもあるのですでに準備は始まる。
「今年の曲なんだけど、一部でG線上のアリア。二部でロッキーのテーマで二回ソロを吹いてほしいんだけど・・大丈夫そうかな?」
一部はクラッシック。二部はポップスになる
「無理ではないですけど・・橋川先輩にやらせたらどうですか?」
「橋川かー・・あいつは上手いんだけど、な。」
桐島部長が悩むのも分かる。
橋川愁斗先輩
トランペットの先輩である。
実力があり、技術も高い。
だけど・・表現がない。譜面どおりに吹いてるだけで音に表情がない。
聞いていても何も思わない音。
吹いていても楽しそうに見えない。
ただ、上に行くことだけを考えてる
・・そのせいか異様に私に敵対心を持ってるのは困るけど・・。
「ただでさえコンクールで私がソロをやるんで大変なんですよ」
「まさか・・あいつからなんかされてるのか?」
桐島部長は真剣な顔で聞いてくるが、今のところそーいうのはない。
「そーいうわけではないんですけど・・視線がちょっと。」
「そうなのか・・。まぁ一応考えておいてくれよ。」
「・・分かりました」
と、桐島部長と話が終わった後・・
--ガラッ
「こんちわー!!入部希望でーすっ」
ガラッとドアの音を立て誰かが入ってきた
「(ゲッ・・)」
「こんにちわ。入部希望と言ったね」
苦笑いする私に対して入ってきたそいつに笑顔で接する部長
これからこいつと同じ部活だなんて・・・
先が思いやられる。
こいつ、飛佐井翔となんて・・。