空の奏

今日の練習が終わり楽器を片付ける

「(眠い・・)」


そう思いつつ楽器を片付ける



「音羽」

すると山沖先生が声をかけてくる



「(先生か・・)何ですか?」

「正直に言って欲しいんだが」

「(いきなりなんなんだよー・・)」

「秋山のソロ、どう思う?」

「!?」


そーいう話か、と思いつつしばらく黙り込む

「(・・はぁ)・・なんともいえませんね」

「どういうことだ?」

「少し音程が気になります、けど・・最近、秋山副部長の体調があまりよくない様子なので。そのせいかと」

「なるほどな」

「・・それより」

「ん?」

「そーいうこと私に相談するの、やめてくれませんか?」

「あー・・嫌だったか?」

「えぇ、すごく」

「悪いな!どーしても一弥さんの娘だと思うと・・」

「・・・先生、失礼します」

「お、おぅ」


私は逃げるように立ち去る



音羽一弥

世界的に有名なトランペッター

そして


私の父親でもある




お父さんは





自分の演奏に溺れ家庭を捨てた


今は世界で活躍してるだろう

・・私と母を忘れて

時たま耳にするその名前に



私は憎らしく思う




夢を追いかけるのが男だと


そう言った私の母は今



病に侵され病院にいる






「人間」は自分が一番なんだ

それを思い知った




だから人間を信じてはいけない


男なんてなおさらだ



自分だけを信じればいい



だから私は一人が好き


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