空の奏
「あ~・・ったく・・」
イライラしながら帰り道を早足で歩く
「(割り切ったはず!割り切ったはずなのに!)」
お父さんの娘だと言われるのは仕方ない
そう分かってる
この世界に入ったときから分かってた!
なのに・・
「なんでこんなイライラしてんのっ・・!」
おさまらない苛立ちに歯を食いしばる
「(落ち着けー・・え~と・・他のこと、他のこと・・)」
気を紛らそうとすると
余計に苛立ちが大きくなる
「あぁ!もー!」
どうにも出来ず立ち止まる
すると・・
「・・?この音・・」
ふと聞きなれた音が聞こえる
「サックス・・・の音(それもテナーサックス・・)」
すごく綺麗な音
音程もまったくずれてないし
「(上手い・・)」
いつの間にか自分の中にあった苛立ちがおさまり
無意識に音がするほうに足が進む
川に架かる橋のした
そこに一人の男の人がいた
「(あいつが・・吹いてんのか)」
同い年くらいだろうか
私服を着てるせいで分からない
「やっぱ・・上手い」
どうしようもなくそいつに興味が湧いた
ついさっき人間は信用できないと再確認したばっかりなのに
この人と話したいと思った
信用とか関係なく
初めて「人」に興味を持った