15歳のラビリンス
「増田、家にいるんじゃね?」
こうちゃんが答えてたから、問いかけは私たちに向けたものじゃない。
でも、どうしてそこまでカンナにこだわるの…?
足を止めかけた私を彩乃は強引に腕を引っ張った。
少しよろけながらも、再び歩き出す私。
「…さっきも言ったけど、カンナの好きな人は仁哉じゃないから」
「え?」
家の近くの分かれ道で、彩乃がつぶやくように言った。
ここまで無言で歩いてきた私と彩乃。
私は反応して顔を上げる。
「美織にとっては面白くない事だろうけど…カンナが仁哉と一緒にいたがるのは好きっていうのじゃなくて、『好きな人』に近づくためだから。仁哉は単に利用されてるだけ」
「好きな人…って…?」
「…貴昭」
「え?」
貴昭が姿を現したのかと思ってキョロキョロしたけど、姿はどこにもない。