15歳のラビリンス
「仁哉は以前から、父親からイギリスに来いと言われていたの。いろいろと問題を起こしてばかりいるから、環境を変えたほうがいいって。でも仁哉は聞き入れなくてね。それで後一回問題を起こしたらって夏休み明けに約束して、今回約束通り冬休みを待たずにイギリスへ行ってしまったんだよ」
「仁哉君はもう日本には戻ってこないんですか?」
「父親の赴任先が日本になれば戻ってくるんだろうけど、それはいつになるかわからないからねぇ」
いつになるかわからない。
じゃあ、ジンとはもう二度と会えないの?
サトルとのケンカを止めに入ったのが最後だなんて嫌だよ…。
こみあげてくる涙をこらえるように唇をかんでいたら、おばあちゃんが一通の便箋を差し出した。
『深川美織様』
と、あまりキレイとは言えない字で書かれている。
「深川さんにって、仁哉から預かった。あの子を想ってくれてありがとう。本当に本当に…」
「こちらこそ…ありがとうございました」
おばあちゃんに頭を下げて、手紙を受け取ると、河村家をあとにした。