15歳のラビリンス


「そっか」



他にも何か言ってくるのかと思ったら、サトルはそれで終わった。


特に何もないならわざわざ話しかけてくれなくてもいいのに。


そう思いながら、家に帰ろうとビルを出たところで、



「悪かったな」



サトルがふいに言う。


足を止めて振り返ると、彼はすでに事務室に入った後で、姿はなかった。


自分のせいでジンがいなくなったんだって、罪悪感を持っているって事?


私からジンを遠ざけようとしていたくせに、謝るなんて変な奴。



カバンからマフラーを出して首に巻きつけて空を見上げた。


イギリスって、日本より寒いんだよね…?


ジンは今、何をしているんだろう?



今度会う時は、前みたいに優しく笑ってくれるかな?



涙がじわじわと浮かんできたので、それを振り払うように首を横に振った。


強くなるって決めたから。


もう泣かない。





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