【短編】夕暮れビターチョコレート
こんなに悲しい『おめでとう』を言うのは初めてだよ……。
胸が張り裂けそうに痛い。
だって、
いくら恭にいが幸せそうでも、
……私は恭にいのことが好きだから、
ちゃんと祝福できないよ……。
「ありがとう、奈津希。」
なのに、恭にいはいつもと変わらない笑顔で私にお礼を言う。
なんだか余計に切なくなった……。
もう私は、チョコを渡すこともできないんだ……。
こんなことになるなら、
ダメでももっと早く渡せばよかった。
今になってすごく後悔している自分がいる。
――涙が今にも溢れそう。
「あっ、恭にいごめん。用事あるんだ。帰るね。」
私は最後の力で精一杯の笑顔を作って、駆け出した。