たった12ピースのパズル


「ふぅ~…」

大きく深呼吸をしてから

―コンコン

と…数学準備室のドアをノックした


「どうぞ?」

中からそう聞こえ


「失礼します」と

ゆっくりドアを開けた


振り向き、驚いた顔の先生


そんな先生に

入るのを少しためらっていると

「どうぞ。入って」

そう先生が立ち上がり近づいてきた



「名前!」

大声が出てしまい

またしても先生が驚いた顔をする


「え?…高峰?」


「じゃなくて、先生の…」

俯くと

上から少し笑ったような声が聞こえた


「なんだよぉ。高峰、俺の名前まだ知らないの?もう4月も下旬なんですけど」

すこしいじけたような口調になった先生に

そっと顔を上げた


「でも、俺に興味持ってくれたんだな。うれしいよ」

満面の笑みで

本当にうれしそうに笑う先生から

やっぱりまた顔をそらした


「俺の名前は、久留 良輔(くる りょうすけ)。みんなにはクル先とかりょう君とか呼ばれてるけど…別に呼び方はなんでも…」

「あっそ。それだけ」

急激に恥ずかしくなって、数学準備室を飛び出した


「あっ高峰!!」

後ろから名前を呼ばれる声が聞こえていたけど

気にせず前だけ見て走った



―バン!

屋上の扉を開けると涼しい風に包まれ

そこへドサッと腰を下ろした


「久留良輔…」

ってか

クルセンって、りょう君って…

生徒になんて呼び方をさせてるんだろう…


やっぱりあの人

ありえない…。


「はぁ~…」







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