たった12ピースのパズル
「でもやっぱ、目の前で彼氏見せられたときはヤバかったかな…」
小さく呟かれ
「え…?」
と声を上げる。
「彼氏…?」
彼氏なんかいないけど…
「めちゃくちゃカッコ良いやつだったけど、俺と年変わらなさそう…てか、むしろ年上だったし…彼氏がいたんだってショックも大きくて…実は半端じゃなくヘコんだ…」
そこまで言い
先生がゆっくりと体を離した…
「彼氏…いるのにこんなことしてちゃダメだよな…悪い」
思い出したように
先生の顔が辛そうに歪む…
でも
「彼氏なんて…いないよ?」
「え…?いや、え?だって二人で登校してきて…抱き合って…」
戸惑ってるのか先生の瞳が左右に泳ぐ
少し考えて、思い出した。
「あぁ…タクのこと…?」
「タク…?」
「タクは、彼氏じゃなくて…お兄ちゃん。」
「お兄さん…?でも、学校の生徒名簿には…」
キョトンとする先生。
「あ、うん。血の繋がりは全くないし、そうなんだけど…本当にお兄ちゃんみたいな存在の人なの」
生徒名簿、という言葉にピクリとしたけど
タクの話を続けた。
「タクはよく行くカフェの店長でね、いつも相談とかに乗ってくれて、何でも聞いてくれて教えてくれて…」
「待って。そ、それはわかった。でもじゃあ、なんであんなとこで抱き合ってたんだ?」
「…それは…、先生のこと、相談したら…教師はやめとけって。…抱きしめられたのは私もわかんない…」
タクに後で聞いても、曖昧にはぐらかして全然教えてくれなかった。
そう言うと
先生はうーん…と考えるように黙り込んだ。
「そのタクって人に、今から会える?」
顔を上げたと思ったら
真面目な顔してそんなことを聞いてきて驚いたけど
「うん。カフェは開いてる時間だから、いると思うよ?」
時計を見てそう言うと
「じゃあ、今から会いに行こう。」
と先生はいつものように明るく笑った。