ゼブラ

「付近の住民ですよ。何でもこの家から、只ならぬ女性の悲鳴が聞こえたとかで」

鈴木刑事の答えに、男は器用に片眉をあげ、なるほどと得心したようだった。

「只ならぬ? ……確かにあれは、普通の声では無かったな」
「失礼ですね、普通の悲鳴ですよ! 博士があんなことするから!」
「暫く耳がおかしくなった。璃々子くんの声は防犯アラームも負ける」
「博士だって、変態のくせに! 世の変態がドン引きするぐらい、変態のくせに!」
「あ、あのちょっと、お二人とも……」

一体何の話をしているのか、そもそも二人はどんな関係なのか激しく気になった鈴木刑事だったが、彼は職務に忠実な警察官でもあったのだ。

「そろそろ私からの質問に答えて下さい」
「まだだ」

彼の意気込みを踏みつぶす勢いで博士と呼ばれる男は言った。眼鏡の奥の瞳が、鋭い光を放っている。

「あの死体は他殺か? それとも事故死か?」

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