ゼブラ

「あのー、刑事さん? あの人、飛ばされて来たんじゃないですか?」

「……は?」

縞村博士と鈴木刑事の声が見事に重なった。

同時に二人分の訝しげな視線を受けても、璃々子が臆する様子は無い。寧ろ堂々としている。

「だって、博士が言ってたじゃないですかぁ、庭に足跡は無かったって」

腕を組みながら、小首を傾げていた璃々子は、おもむろに右手の人差し指を立てた。

「博士は革靴だし、私はヒール。あの死体さんはスニーカー。多分、鑑識の方もそういう判断してると思いますよぅ、あの人は地面を歩いてないって」
「じゃあ、どうやって侵入……っあ! 屋根を伝って来たとか」

鈴木刑事の思いつきを、首を振って否定する璃々子。

「いえいえ、それはちょっと厳しいです。お隣さんから侵入も、出来なくはないかも知れませんが、走り幅跳びが相当出来ないと無理ですよぅ。それに、あの人屋根から足を滑らせた転落死って訳じゃ、ないですよね?」

それもそうだった。
それならば地面に血が飛び散るはず。
しかしあの死体は壁に衝突した後、地面を転がったような状態だった。 

……壁に、激突?

頭の中を横切った何かに、鈴木刑事は考え込む。此処に来る前に、何かを見た気がしたのだ。
璃々子は続けた。

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