ゼブラ
玄関の脇の白い壁に、飛び散った血液。
地面に散乱する植木鉢の破片。
足元に転がる男の死体を見下ろして、家主たる縞村 寿郎(しまむら としろう)は呟いた。
長身痩躯を覆う白衣が、夕方になり強くなった風に、大きく揺れる。
「罪の言い訳に、しばしばそんな言葉を残す犯人はいるが、果してその理由はどうなんだろうな。
生きていても迷惑な人間は、殺されてもしょうがない。だから殺したと言いたいのだろう。だが」
奇妙な白黒の髪の隙間からのぞく、眼鏡越しの切れ長の目。いつもは退屈気に細められているそれが、今は新しい玩具を前にした子どものように、輝いていた。
死体を、見て。