ゼブラ
彼女は電話の相手と暫くお決まりのやり取りをした後、本題つまり、今日の出来事の報告に入る。
「と云う訳でぇ、刑事さんに名前聞かれて咄嗟に『高嶺璃々子』を名乗っちゃったんですよぅ、博士もその場に居ましたし」
『あーそりゃ仕方ないわ。メイド姿の時は、それがアナタの名前なんだし』
「それで、万が一ですけど、刑事さんが少し調べたら私が偽名だった事、ばれちゃうと思うんで、報告も兼ねて電話したんですけどぉ」
『分かった、聞かれたら答えとくよ。アナタが仕事用に偽名を使ってる事。ホストの源氏名みたいなもんだってね。ウチの子は大抵そうしてるし』
「助かります。多分事務所まで捜査されることは、無いと思うんですけどね、只の目撃者ですしぃ」
『大丈夫、上にも私から伝えとくから。……にしても、本当に面白いね、アナタの雇い主は』
「ご迷惑をおかけしてすみません。でも、博士って結構前からウチのお得意様なんですよね?」
『うん。けど皆長続きしなくてね。アナタ現在最高記録よ、「璃々子」』
「まだ三カ月ですよぅ。って言っても、私自身三カ月が、最長ですけど」
『じゃ、これからどんどん記録更新していきなさい。期待してるわよ』
「はぁい、ありがとうございます、マユさん。それでは、夜分遅くにすみませんでした、失礼します」
『はい。アナタも気を付けて帰るのよ? じゃあ、おやすみなさい』