ゼブラ
「目障りなクズを殺した人間というのは、そいつ以下のクズだと言う事にはならんか? 自らをクズ以下に貶め、更にクズは殺しても良いと自分で自分の首を絞める。全く、愚の骨頂だ」
吐き捨てるように紡がれていた言葉が切れて、その切れ長の目がこちらを向く。
「そうは思わんかね、璃々子くん?」
帰宅に気付いていたらしい彼は、眼鏡の奥の瞳を細め、彼女を見た。
スーパーの袋を手にぼんやりと独白を聞き流していた、メイド姿の璃々子は、呼ばれて大きな目を瞬かせた。
天使のように愛らしい、といっても過言ではない童顔を、傾げ、
「えーと、つまり、博士が殺したってことですかぁ?」
「違う、全然違う。君は本当に人の話を聞かないね。私は今、自分が犯人ではないと云う話をしていたんだ」
「そうだったんですかぁ。博士の話は長くて、聞いてると、どうでも良くなっちゃうんですよぅ」
栗色の柔らかそうな巻き毛を揺らして、少女は照れたように笑った。
男にとっては、何故そこで笑うのか理解不能だったが、それよりも目下、興味深いものが彼の足元に転がっている。
死体だ。