永久の贄[BL]
「落ち着いたか」

「落ち着いた……」

「そうか。それなら後は月花とババ様に任せられるな」


こちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。恐らく哉の物。

雪や月花はまだ軽いし、ババ様は重いけれどゆっくりだから。

哉の事だ、陽が沈んでからじゃ遅すぎるから今すぐにでも出ようとでも言いだすのだろう。

別れるには惜しいがこれが今生の別れと決まった訳ではない。だから悲しい物などはない。

それなのにそれを感じ取ったのか、彩十はまた泣き出しそうな顔をしやがる。


「なんだ、そんなにオレと別れるのが嫌なのか?」

「そ……んなん、じゃ…………」


図星か。あからさまに戸惑っている所からして。こいつは本当に素直じゃない。

まあ、オレも寂しくない、別れるのが辛くないと言ったら嘘になる訳だけど。
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