永久の贄[BL]
「漸く本性を現しやがったな!」

本性を現した訳ではない。ただ機嫌が悪いだけだ。

こいつらだけじゃなくて、真偽は分からないがオレまでもが彩十を苦しめていて、

それでさあ助けようだなんて暢気に考えていた自分に腹が立つ。

さっき倒した奴もオレがずっと動揺して攻撃もろくに出来ないようになるとでも思っていたようだが、その甘さが命取りになる。


「オレに近付くな。血を流したくなければな。今は機嫌が悪いんだ。何をするか分からない」

「う、うるさい! 問答無用!」


一瞬怯んだように見えたが、その恐怖を必死に隠すように男は刀を構え、振りかざす。

だがオレはその刀を再び血で真っ赤に染まった手で握り、真っ二つにへし折った。

折れる短い音がオレと男の間で響き渡る。

それから手に残った刃だけの物を、動揺している男の肩へ突き刺した。

先程の折れた音とは違い、男のその悲鳴は雪や雪と対峙している連中、そして村長の耳にも入っただろう。
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