すみれの花
ある日、家に帰るとそこには珍しく両親がいた。
(珍しいな……ι)
でも両親は、眉間にシワをよせて険悪な表情を俺に向けている。
「拓哉…、ちょっと来なさい。」
父親が言った。
そこに居合わせたすみれが心配そうに俺を見る。
“心配なんかしなくても大丈夫だから”
そういう意味を込めて、俺はすみれに微笑んだ。
俺は父さんのあとについて歩く。
…ほんとは大丈夫だなんてウソ。
多分父さんが怒ってるのは………たぶん……。
「拓哉……、お前が“あの子”に夢中なのは分かっている。だけどその……小野寺家次男としての自覚を持ってほしいんだ…。だから…」
言われなくても、分かってた。
俺は、百合子の彼氏である前に、小野寺家御曹司だ。
御曹司として庶民との恋など、許されない。
頭の隅では分かっていた事だったけど、実際に目の前に突き出されると、正直、ツラかった。
それから次の日までずっと泣いた。
夕食も食べに行かず、
静かに..だけど激しく泣いた。