すみれの花
突然ドアが勢いよく開けた。
入ってきたのは中貴原だった。
「なにしてるんだ!警察呼ぶぞ!」
手首を縛られ、泣いている私をみてすごい形相で叫ぶ。
良かった…。助けにきてくれたんだ。
男はチッ
と舌打ちをすると、
そそくさと部屋から出て行った。
「……」
中貴原は目の行き場がないというように
顔をそむけながら私にコートをかけた。
そして縛られていたネクタイを
丁寧に外していく。
「…早く着なよ。あっち、向いてるから。」
そう言うと、中貴原はドアの方を向いた。
すみれはちゃっちゃと制服のボタンをしめると、ローファーを履き、帰る支度をした。