hair salon 『K』
「か、考えたこともないです…」
「まぁ楽しみにしてます!!
じゃあ最上さん、また!!」
金野様は頭を下げて走って行った。
「あ…お待ちしております!!」
走っていく金野様の背中にそう呼びかけ、お店の中に戻った。
「相変わらず…長いな」
黒田さんがカウンターで仕事をしながらポツリとこぼす。
「そ、そうですか?」
「茜は人気出てきて、指名も増えてるんだからお見送りは早くしてほしいんだけどなぁ」
「すみません…」
黒田さんはカウンターから出てきて
「ま、お客様が笑顔で帰られてるからよしとするか!!」
私の頭を撫でながらそう言った。
「ありがとうございます!!」
「おっと…こんなことしたら涼太に怒られるな…」
私の背後に目を向けて、頭から手を離す。
私が振り返ろうとすると、黒田さんの手が目を覆った。
「黒田さん?」
「見ないほうがいいぞ…」
多分、涼太はよっぽどひどい顔をしているんだろう。
「…わかりました」
私は目を覆われたまま、前を向いた。