hair salon 『K』

「か、考えたこともないです…」


「まぁ楽しみにしてます!!

じゃあ最上さん、また!!」

金野様は頭を下げて走って行った。


「あ…お待ちしております!!」

走っていく金野様の背中にそう呼びかけ、お店の中に戻った。


「相変わらず…長いな」

黒田さんがカウンターで仕事をしながらポツリとこぼす。


「そ、そうですか?」


「茜は人気出てきて、指名も増えてるんだからお見送りは早くしてほしいんだけどなぁ」


「すみません…」


黒田さんはカウンターから出てきて

「ま、お客様が笑顔で帰られてるからよしとするか!!」

私の頭を撫でながらそう言った。


「ありがとうございます!!」


「おっと…こんなことしたら涼太に怒られるな…」

私の背後に目を向けて、頭から手を離す。

私が振り返ろうとすると、黒田さんの手が目を覆った。


「黒田さん?」


「見ないほうがいいぞ…」

多分、涼太はよっぽどひどい顔をしているんだろう。


「…わかりました」

私は目を覆われたまま、前を向いた。



< 201 / 212 >

この作品をシェア

pagetop