hair salon 『K』
「茜!!」
道を歩く私を涼太が追いかけてきた。
「お前…怒ってんのか?」
息を切らしながら涼太が尋ねる。
「怒ってないよ?」
「じゃあなんであんなこと…」
「ああ、触れないでって言ったこと?」
「ああ…」
「あれは、『お店では』今後一切触れないでってこと」
「店では…?
じゃあ店じゃなきゃ…」
私は少し下を向いた。
「そんなさ…私だって涼太のこと…す、好きなんだから、手とか繋ぎたいし……」
「…はああああ!!」
涼太はその場にしゃがみこんだ。
「りょ、涼太…?」
私もしゃがみこんで、涼太と目線を合わせる。
「ったく…びびらせんじゃねーよ」
涼太は私の鼻をつまんだ。
「ふが…」
「嫌われたかと思ったじゃねーか」
涼太は私の鼻から手を離して、ため息をついた。