hair salon 『K』
「二人ともしっかり働いてますよ。息も合っていて…」
「あ…すみません…」
そうだ。
この人は涼太が好きだったんだ。
俺が謝ると、麻百合さんは慌てて首を振り、
「いえ、大丈夫ですよ
…そりゃあ最初は泣いたりしましたけど、吹っ切れました!!」
笑顔を浮かべた。
「それに…最上さんに髪を切ってもらってから良い出会いが多くあって…」
「ああ、噂通りですかね」
「聞きましたよ。その噂。彼女にもっと早く切ってもらっていたら私の恋は叶ったんでしょうか?」
「さあ、それはどうですかね?
ただ…良い出会いが麻百合さんの元に訪れたのは、茜のおかげのような気がします」
「私もそう思ってます」
麻百合さんは髪を耳にかけた。
「じゃあ、私はこれで…
お仕事中にすみませんでした」
「いえいえ、お話しできて楽しかったですよ」
麻百合さんはお辞儀をしてから、扉に手をかけた。
けれど「あ」と小さく呟いてから振り返り
「あの噂、広めたのはあなたでしょう?」