極超短編劇場
「このように、常に大地は上昇を続けている訳です。」

理学の教師が黒板に書いた図を示す。

其処には、丸いお盆の上に立つ人が描かれている。

「この事が一番良く解る現象と言えば何でしょう?」

教室の数人がパラパラと手を挙げる。

「はい、山崎君。」

「雨です。」

山崎は、得意気にこたえる。

「そう、昇る大地の様子が良く分かりますね。」

僕は、そんなやり取りを聞きながら、ぼんやりと窓の外を見る。

「あっ、雨だ。」

ポツリと呟いた僕の言葉は、講義の合間の静寂にフワリと浮いた。

しばし、みな無言で外を眺めた。

青い空から水滴がパラパラと地面にぶつかる。

「この様に、宙を漂う水滴に、大地が遭遇する現象を我々は雨と呼びます。」

じぁあ、このまま大地が上昇を続けると、どうなるんだろう?

何処から、大地は上昇してきたのだろう?

世界に果てが有るとして、そこまで上昇した大地はどうなるのだろう?

そもそも世界の果ては何処だろう?

考えると何だか不安な気持ちになった。

だから、昼ご飯の事を考える事にした。
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