届け
 それでもあなたは普通に接してくれて。
 あなたはすごく優しかった。
 普段は意地悪なのにね。
 あなたは私に意地悪するせいか、周りの人に、勘違いされるようになったね。
 私はその勘違いが嬉しかった。
 だって、あなたが私のことを好きっていう勘違いだったから。
 数学の授業中に、私にばれないように、私の教科書に落書きしてたよね。
 私はそのとき全然気付かなかった。
 後ろの女子からこんな声が聞こえた。
 『お前、どんだけ好きなんだよ』
 私はすごく嬉しかった。
 たとえ、勘違いだったとしても。
 すごく嬉しかった。
 美術の授業の時。
 作業をする時、あなたはいつも私の隣の席に座ってたよね。
 私は嬉しかった。
 あなたは時々声をかけてきてくれて。
 本当に嬉しかった。
 女子が周りに集まってきて、
 『〇〇って、☓☓のこと好きだよね~』
 って、みんなが言ってて、私は聞こえてないふりをしたけど、すごく嬉しかった。
 あなたが私を好きでなくても、そう言われてるだけで幸せだった。
 掃除中の時も。
 1人の女子が、こう言った。
 『〇〇って、ホント☓☓のこと大好きだよね』
 って。
 私はすごく恥ずかしかったけど、嬉しかった。
 掃除が終わる頃。
 あなたは私に、命令したね。
 1人の男子が、こう言った。
 『〇〇、頑張れ』
 って。
 私はその言葉の意味が分からなかった。
 何を頑張れなの?ずっとそう思っていた。
 そのあとあなたは、少し緊張した様子で私に命令したね。
 そのときは、あなたが何で緊張しているのか、分からなかった。
 理科の授業。
 ガスバーナを使った実験で、空気調節ねじがなかなか回らなくて、困っていた時。
 『〇〇、これやって』
 って、私があなたに頼んだ。
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