秀才少年の憂鬱 天才少女の秘密
杏里自身、あまり回りに興味は無かった。
けして自惚れでは無いが、回りばかり気にすると、自分を見失いそうで怖かったのだ。
自分が見上げられ、目標にされているということは分かっていた。
けどそれが何故なのかは分からなかった。
けれど。
今日の、領に言われたあの言葉。
少しだけ、何故なのか、理解出来た気がしたのだ。
「も一度、会いたいです…会えるでしょうか…」
確か明日は、文系理系合同の、化学の実験があったはずだ。
必ず、領と顔を合わせる。
よし、と気合いをいれると、杏里は鞄を手に取った。