To my dearly beloved
慌ただしい月末処理を終えて、ようやく会えた金曜日の夜は輝のお家でお泊りデー。
ブラックレザーのソファに体育座りをしていた私を、楽しそうに笑うのが彼氏だ。
それぞれお揃いのマグカップを手に隣り合えば、外の寒さをすっかり忘れてしまう。
「おいしー、輝が淹れると何でこんなに美味しいの?」
「それはサンキュ。カフェのバイトも役立つもんだな。
大学時代に住んでたトコの近所のカフェでホールスタッフしてたんだよ。
小さな店だったし、バイトの俺も厨房に入って調理補助も経験させて貰ってさ…。
こうしてカワイイ鈴ちゃんのご機嫌取りに一役買うとはね」
隣に座る彼は懐かしげな表情に変わり、コトリとガラステーブルへカップを置いた。
「えー、初耳だよそれ…!
あ、でも、だから輝は料理も上手で綺麗好きなのかぁ。すごい納得した!
だけど、…お客さんにモテたんでしょ?」
「それはどうだろう?」
「絶対そうだよね。
この調子でお客さんをドキドキさせたんだよ、うん」
「あいにく、鈴ちゃんしか興味無いから」
ひとりでウンウン納得していると、ハハッと軽快に笑いだして、またはぐらかされた。
もーズルい。こうやってふんだんに好きになる“材料”まで仕込んで来るなんて…。