To my dearly beloved
集まった男の身なりや態度を見れば、それは誰だって気づく“普通”ではない空気。
「先にどうぞ?」
「あ、すんません…」
もう一人まだ挨拶を終えていない人物は、そんな彼の心情を汲み取って先に勧めた。
隼「え、と…俺は、マキアートの阪井隼です」
拓海「最後になりますが、社長室シリーズの東条拓海です。
今日はどうぞよろしくお願いいたします」
温厚な人柄のままに挨拶をした拓海によって、ひとまず全ての自己紹介が終わったが。
隼「…何か明らかに場違いなんですけど、俺だけ」
大和「ハハッ、俺こそフツーだって」
隼「川崎さん…、GELに勤めててソレは無いっす!」
大和「会社なんて関係ないよ」
珍しく緊張と落胆している隼を宥めたのは、いつの間にか進行役となっている大和。
確かに…言われてみれば、和也、涼雅、拓海は会社経営をしている言わばセレブ。
さらに会社勤めであっても、大和は旧家出身で、修平の実家も歯科医院をしている。
この中でとにかくフツーの感覚を持った者は、祖父がカフェ経営する隼だけだろう。