To my dearly beloved
「真帆ちゃん、今日もグッジョブ」
合同の全体会議を終えて部へ戻ろうとすれば、司会担当の松岡さんが話しかけて来た。
「ええ、松岡さんが褒めて下さると何かありそう…」
もちろん率直に嬉しいのだけれど、ニヤリとほくそ笑む場合は間違いなく“何か”ある。
「オイオイ、先輩のラブを…」
「要りません。キッパリお断りします」
「うーわー、とうとう妹も反抗期?」
「そうかもですね」
いつも恒例的やり取りへと発展するのは、やっぱり気の置けない先輩・後輩の間柄で。
飄々とした松岡さんの真意が殆ど見えないけれど、このリラックスムードも好きな私。
そう毎日が目まぐるしく過ぎていく中、ホッと息づける瞬間に感じる事がいつもある。
「――フッ…、とうとう嫌われたか」
優しくて心地良い低音ボイスが響いた時、落ち着いた筈の鼓動が煩くなる原因がソレ。
「どこぞの男に掻っ攫われたせいですよ」
「もう松岡さんてば…。でも、部長のお陰ですから一理ありますね」
3人で並んでいながらも、ふと右隣を歩いている上司の方へと目を向けてしまう私。
「あーあ…、天然小悪魔警報発令すべきだ」
「確かに――嬉しくもあり、心配も尽き無いな」
一体何のために働くのか…、そんな不平不満を抱いていた新人の頃に出会った人。
エリートの呼び声高きダークグレイの瞳を持った上司であり、今は婚約者でもある…。
【エリートSS2★終】